透明なカラーフィルターを重ねたような、美しい透明感が魅力の水彩画
絵の具が紙の上でふわっと広がって生まれるにじみやグラデーションがなんとも美しく、描くたびに新しい表情をみせてくれます。
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ふなやまえみ『星つかまえた』
こんにちわ!
水彩画家のふなやまえみです。
リアルな風景画や人物画だけでなく、ふんわりとファンタジックな作品や、キャラクターのイラスト画などにも、幅広く相性のいい人気の水彩画。
「水彩画を始めてみたいけれど、絵の具の種類やメーカーがたくさんあって迷ってしまう…」
そんな初心者さんのお役に立てればと思い、 失敗しない絵の具選びのコツとおすすめのメーカー をご紹介していきますね。
Contents
水彩絵の具ってどんなもの?
水彩絵の具は、主に 顔料 とそれを紙などに定着させる アラビアゴム を練り合わせて作られた水溶性の絵の具です。
この配合の違いで「透明」「不透明」「半透明」と3つのタイプに分かれるんですよ。
透明水彩絵の具

水彩画といえば、この「透明水彩」を使った作品を指すことが多いです。
なんといっても透明感が美しく、柔らかくも鮮やかな発色が特徴。
水をたっぷり含ませると色が淡く広がり、少し水を控えると濃く深みのある色が出ます。
下の色を透かして重ねることで、透明感のある重なり合いが生まれるのが魅力です。
パレットに残った色は乾燥しても、再び水で溶かして使えます。
紙の白を残したり生かして描くことが多く、白絵の具はあまり使いません。
不透明水彩絵の具(ガッシュ)

不透明水彩絵の具はマットではっきり鮮やかな仕上がりになります。
色を塗り重ねると下の色が隠れるので、塗り直しがしやすく、初心者さんにも使いやすい画材です。
白絵の具で明るさを調整するのも特徴的です。
乾燥するともう溶けなくなるので、パレットに残った色はすぐに洗いましょう。
厚く塗った部分は、長期保存の際にひび割れしてしまうこともあるので注意。
半透明水彩絵の具

幼稚園や小学校でよく使われるタイプがこれ。多くの方が一度は使ったことがある画材じゃないかなと思います。
水の量次第で透明水彩っぽくも不透明水彩っぽくもなるいいとこどりタイプです。
手軽ですが、透明感や鮮やかさは専用の絵の具に劣ることも。
画材屋さんに行かなくても、スーパーなどでも購入できるのもありがたい。
💡 この記事では、一般的に「水彩」といえば指す 透明水彩絵の具 を中心にご紹介しますね💡
水彩絵の具の選び方① セットとバラどっちが良い?

絵の具を選ぶとき、最初に迷うのが「セットで買うか?バラで買うか?」です。
いきなり結論ですが、
初心者さんには、まずセット購入がおすすめ!
基本の色を揃えておけば混色でたいていの色は作れるし、「この色が足りない!」と気づいたら、そのときにバラで買い足していけば無駄がありません。
最初から好きな色だけをバラで買うのもよいのですが、持っている色の数が少なければ少ないほど、混色をしないといけなくなります。
この混色はちょっとコツが必要なので、難しいと感じるか方も多いです。
なので、色相環に基づいたバランスの取れたセットを持っていると、いろんなモチーフを描くのに断然対応しやすいです。
水彩絵の具の選び方② チューブ絵の具と固形絵の具
水彩絵の具の販売形態は2タイプ
チューブタイプと、固形のパンカラーと呼ばれるものがあります。
「チューブタイプはなんとなく知ってるけど、固形のパンカラーって何???」
と迷う方も多いと思います。
両方とも魅力がありますが、それぞれ特徴が違うので、描きたい作品や使い方に合わせて選ぶと失敗が少ないです。
チューブ絵の具
馴染みがあるのはこちらのタイプかなと思います。
チューブタイプは、ペースト状の絵の具を水で溶かして使います。
広い面に色をのせやすく、発色もしっかりしているので、大きな作品や濃い色をしっかり出したいときに向いています。
色数が豊富で、微妙な色の調整も自在にできます。
ただ、筆に絵の具がたくさんつきやすく、細かい色の調整は少し難しいことがあります。
また、蓋をしっかり閉めないと中身が固まってしまって、無理に押すとチューブのお尻から絵の具が飛び出してしまうこともあるので注意が必要です。
古くなるとまるごと固まってしまうことも。
固形絵の具(パンカラー)

固形絵の具は、小さな小分けの容器に入った絵の具がパレットにセットされていて、必要な分だけ水で溶かして使います。
持ち運びが便利なので外での写生などにおすすめ。
劣化しにくく、色の調整もしやすいのが特徴です。
見た目もコスメみたいでかわいく、みるだけでワクワクしますね〜!
品質の良い顔料が使われていることも多く、美しい色彩と高級水彩紙との相性を追求しているものもあります。
大量に絵の具を溶かすのには不向き。大きな絵を描く時は、パン小さすぎて面倒だと感じることも。
太い筆が入れにくかったり、パレットの混色スペースが狭く感じることもあります。
私のおすすめ!チューブ絵の具を乾燥させて使う方法

チューブから出したてのペースト状の絵の具を使うのではなく、あらかじめパレットに出しておいて乾かしておきます。
絵を描く時は、お水を垂らしたり乾いたを濡れた筆で溶かしながら使うのですが、こうすることで、少しづつ絵の具が溶け出してくるので、絵の具の濃さを微調整しやすいです。
大量に絵の具を溶きたい時には、チューブから出したてのペースト状の絵の具を溶くと、早くて楽です。
チューブタイプの色数の多さを楽しめるし、大きな絵にも対応できる。
パンカラーの様に色の濃さなどの調整がしやすくて、持ち運びもしやすい!
いいとこ取り作戦です。
外で写生をするときには、チューブはストックとしてお留守番。パンカラーのようにパレットだけを持ち運べば、荷物が少なく済みますね。
ただ、出しておいたけど使わなかった色は、時間が経つと割れてしまうことがあるので、年に1回くらいパレットをお掃除して、不要な色は取り除くと安心です。
水彩絵の具の選び③ 人気メーカーの特徴
透明水彩絵の具を買うなら‥チューブタイプのセット売りのもの!
といっても、画材屋さんに行くとメーカーがたくさんありますよね。
しかも値段もかなり幅がありますし、今や100均にだって透明水彩が売っています。
最初はとりあえず安いものでいいのかな?
最初だから高いものを揃えるべきなのかな?
と、選択肢が多い分困ってしまいますよね。
ここからは、人気メーカーの特徴をご紹介していきますね。
① ホルベイン




初心者から上級者まで使いやすい人気のメーカー
わたしの中で『Theスタンダード』!!
鮮やかで透明感のある美しい発色
水に溶きやすくて、描きごこちが滑らかな印象あります。
パレットに残った色が乾燥しても、ほとんどの色が再び水で溶かしやすいかなっと思います。
基本色セットの種類:12色、18色、24色、30色、48色、60色、108色
と、ラインナップがめちゃくちゃ充実。
予算やお好みに応じて選べますね〜
グラニュレーティングカラーズ
ルミナスカラーズ
イリデッセントカラーズ
ナイトフォールカラーズ
などの新しい特別色も充実してます。
色を出したてのルミナスカラーは、とってもかわいいんだけど
褪色が早すぎるのが残念すぎます。
本気の作品制作する時は注意してください。
② ターナー




色の純粋さにこだわった、新しい透明水彩絵の具
全54色のうち40色が単一顔料で作られているってすごい!
色って混ぜない方が断然彩度が高く、透明度も高いので、
複数顔料よりも単一顔料の方が、混色しても色が濁りにくいっていう特徴があります。
なので、色を混ぜて使っても美しく発色してくれるのが魅力です。
しかも耐光性に優れていて長期間保つことができる。
高品質でコスパがよいのが嬉しいですね!
ジャポネスクカラー、マヤカラーなど個性的な色展開がある。
日本色と、海外色と呼ばれるシリーズがありますが、どちらも日本で買うことができます。
ちょっと不思議。
メタリックカラー
カラーパール
インターフェアレンスシリーズ
などなど、種類が本当に豊富。
マヤカラーという魅惑のシリーズも!
名前でもう気になるでしょう?
ただ一部の色は発色が弱く、伸びにくいものもありますが、なんでも一長一短ですよね。
③ クサカベ




明るい発色と、輝きのある透明感を 最大限に生かした透明水彩絵の具
複数顔料を組み合わせたクサカベ特有の色が多くて
他メーカーと名前が一緒でもクサカベの絵の具はちょっと個性的。
環境と人にやさしい絵の具。
カドミウムやコバルトなどを使わず、高機能有機顔料を採用している。
絵の具って確かに化学物質のかたまりですよね。
扱いが不慣れな初心者向けに、ガイド付きのセットがあるのは嬉しいところ。
ハルモニアシリーズ
グラニュレーションカラー
ステイニングカラー
などなど美しい分離色やインクの様な鮮明感などの、個性的な色展開があります。
ハルモニアシリーズはわたしのお気に入りで。
楽しすぎて一時期乱用していました。
背景に塗ったのは「パープルスピネル/煌め尖晶石」
名前も素敵です。
分離色は、水で伸ばしていくと粒子と色に分解してきて楽しいです。
紙の目に入って独特の質感が出ておもしろいです。

④ サクラ
学びから制作まで、幅広く応える透明水彩
- 価格が安く、気軽に始められる
- 混色しても濁りにくく、初心者でも使いやすい
- 顔料の粒子が細かくて伸びが良い
- 耐光性も比較的良好
- 色の展開がシンプルで、名前もわかりやすい
⑤ 100均の水彩絵の具



コスパ最強は言うまでもない
12色入りで110円。
1本あたりなんと9円と激安!!
安すぎて衝撃を受けて、どんなもんかとダイソーに行ってみました。
あった!!けどこれは不透明かな‥

ホルベインの似たような色と比較してみました。
あおに対してセルリアンブルー
あかに対してカドミウムレッドディープ
きいろに対してカドミウムイエローレモン

粒子が粗く、溶けにくいと聞いていましたが‥
触った感覚では特に溶けにくさは感じませんでした。
それよりも!
写真の通りで
全然グラデーションになりません。
水彩に興味を持ってくれた方がこれを使って
うまくいかない、水彩苦手って感じるのではないかと
ちょっと心配になるくらい。
初心者さんこそ
道具大事!!
いいところは、
コストを考えずにバンバン使えるところ。
作品クオリティを追求しない場とか、イベント、簡易的なワークショップなどにはよいかもしれません。
水彩絵の具の選び方 まとめ
初心者さんには ホルベイン12色セットがおすすめ!
ホルベインをお勧めするポイントは‥
- 基本的な色相環に沿ったセットで、色のバランスが良い
- 鮮やかなピンクや赤系は別途バラで追加すると作品の世界観に幅が出る
- グリーン系は鮮やかすぎて浮くと感じるときは、混色で調整すると自然な風景が描けます
初心者さんは、
まず最低限のセットを使いながら、必要に応じてバラで色を追加する
というが無駄なく楽しめる方法かと思います。
私は最初、気合を入れて60色セット買ってしまったんですが…
正直、使わない色がめちゃくちゃありました(笑)。
箱にずらりと並んだ色を見てテンションは上がりましたが〜
実際に使う色は限られるんですよね。
絵を描きながら買い足して行って
あなただけお気に入りパレットを作っていってほしいです!
最後に、他のメーカーの特徴を一言でまとめると‥
- 抜群の透明感→ターナー
- 複雑個性的な色あい→クサカベ
- 気軽にお絵描きしたい→サクラ
- より気軽で、クオリティはそんな求めない→100均
本格的に水彩を描いて行きたい!
上手になりたい!
と思って描いているのに、
合わない絵の具を使っていることが原因で、
上手くいかないと悩んでいる方がいらっしるんじゃないでしょうか。
それでモチベーションが下がってしまって、
水彩自体をやめてしまう、
なんていうのは勿体無すぎます。
まずは基本の絵の具を押さえて、水彩画を楽しんでもらいたいと思います!
ではまたね〜!